2.改造人間瀧川 耿介

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「………実はね、お姉ちゃんの事なの」 伏せ目がちに言う奈々も可愛かった。……じゃなくて、 「柚穂さんの事……?」 「うん、そう」 語尾が少し弱めな奈々だった。一応俺も聞き返したものの奈々の言いたい事、つまり柚穂さんについての事はあらかた分かっていた。まぁ、必死にというか、言いにくそうにしている奈々を差し置いてそれを言う程俺も野暮な男じゃないので……いや、言わせるのが野暮なのか? 「実はね……祥吾くんに協力して欲しいと思って」 そうあれこれ考えている内に、その答えを奈々がまた語尾を弱めに言った。 「協力?」 奈々から全て聞こうと決めた俺は自分で答える事を放棄。奈々にとりあえず話を聞く事にした。 「………協力」 奈々が神妙に頷く。 「お姉ちゃんのずっと抱いていた恋に協力してあげて欲しいの」 次は語尾強めに見上げる奈々の顔には、本気の願いがあった。 俺は奈々の恋人として協力してあげたいと思った。この願いが奈々の心からの願いだという事は知っている。そして、それは…… 「瀧川くんの親友の祥吾くんが味方に付けばそれこそ強力な協力者になると思うの」 ジッと見つめる奈々に俺は目を合わせた。 例えそれが目を逸らすべき答えだろうと俺は目を合わせる。真っ直ぐ目を見つめて俺は口を小さく開いた。 「ごめん奈々。それは出来ない」 「………」 奈々は驚いたように目を開いた。多分奈々の予想とは 「そうよね。分かっていたわ……」 口調が戻っていた。どうやら、奈々は俺の答えを分かりながら聞いていたらしい。 奈々は下に向けていた目を再び俺に向けた。 「……とりあえず、理由を聞いていいかな?ダメ元……っていうのも変なんだけど、私も反論出来るのならして協力して欲しいし」 口調がさらに戻り、作り笑いをしていた。 「あぁ……」 俺は軽く息を呑んで、口を開いた。
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