Request:26 Kind memories

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「た、ただいま……。町の人達と少しお話ししてきたから。」 苦笑いを浮かべながらリアの質問に答えるアイリーン。 ニコやかな彼らとは裏腹に、ティアンナは少し浮かない表情を浮かべていた。意を決した様に顔を上げると、大きく息を吸い込む。 「ねぇ!……ちょっと聞いてもらいたい事があるの。」 「今じゃなきゃダメか?晩御飯の準備が……」 「ごめんね、気持ち的に今話しておきたいの……。」 いつになく真剣のティアンナ。タイミング良く寝ていたアルバートが目を覚ました事もあり、皆で彼女の話を聞く事に。 「話したい事って言うのは、アタシのお兄ちゃんの事なの。」 「ティアンナの兄貴って、オブシダンで逢った……」 「そう……お兄ちゃんがキメラになって、多分、あのエヴァンって人達と一緒に居ると思うんだ。」 「外を出歩いてるキメラなんて、彼ら以外に見た事も無いしな……」 「うん。確証は無いけど、きっとまたエヴァン達と戦う事になると思うの。意味があるか分からないけど、少しでもお兄ちゃんの事を知っておいてもらいたい。」 ティアンナの眼には力強い意志が篭っている。しかし、その決意は慕っていた兄との戦い、命の奪い合いを覚悟したという事。出来る事なら、兄妹で傷付け合う行為はしてもらいたくないのだが……… 「……いいのか?兄ちゃんの事、大好きだったんだろ?」 「……うん……でも、アタシの知ってるお兄ちゃんは、もうこの世に居ないから……あの人はお兄ちゃんと同じ姿でも、アタシのお兄ちゃんじゃない。」 念のためにライが確認するが、ティアンナの心は既に割り切っているようで決意が揺らぐ事は無かった。 暫し続いた静寂をティアンナのゆっくりと、しかしハッキリとした言葉が打ち破る。 ────25年前 ──── 竜角族は他のバイアス族とは違いトバルーシュ大陸ではなく、アジェストリア大陸という、比較的小さな大陸にて大きく発展を遂げていた。だが同じバイアス族、トバルーシュ大陸とも貿易は盛んに行われている。 そんなアジェストリア大陸の西部、広大な野原に1人座り込み、花を愛でているのは幼き日のティアンナ。温かな日射しと心地好い風が吹き抜け、花の香りが彼女の鼻をくすぐる。 「おーーい、ティアンナーー!!」 後方から彼女の名を呼ぶ声。後ろで結んだ髪を揺らしながら少女が振り向くと、1人の青年が笑顔で大きく腕を振っている。
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