プロローグ

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 幼稚園児だった頃。    友達と飽きもせず、何時間も四つ葉のクローバーを探した事があった。友達数名は見つけていたのに、私だけが見つけられなかった。なんで私だけ?泣きべそをかくと、友達のひとりが私に四つ葉をくれた。  そのとき、その子はこう言った。 「ふーちゃんち、ふしあわせだから、あげるね。まみちゃんちは、しあわせだから」  笑顔で、そう。  当時『ふしあわせ』の意味を知らなかった私は、彼女が言った言葉を気にすることなく素直に「ありがとう」と言った。  今考えてみれば、失礼にもほどがある。しかしあの頃、『ふしあわせなふーちゃん』は自分が『しあわせなふーちゃん』と疑っていなかった。  ふしあわせ。不幸せ。  何も知らないとは、気楽な事。  知れば、嫌になる。  もう、知りたくない───。  
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