第1章 踏み込んだ世界篇

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黒田は苛ついていた。   腫れ上がった傷が痛む度に顔を歪める。   黒田は今まで喧嘩で負けた事が無かった。   中学生になると同時に大柄だった黒田は上級生の的になった。   一対多数も無かった訳ではない、高校へ入学してからもそれは続き、いつしか番長の様な存在となっていた。   今日の喧嘩は相手の逆恨みだった。   しかし、今回はヤクザまがいのチンピラまで引き連れてきた。   相手が率いている暴走族とも関係のあるヤクザと言っていたが、定かではないし興味もない。   ただ、自分一人に数十人で襲いかかる、そんな理不尽な暴力に負けた事が悔しかった。   黒田は今まで一度として自分から喧嘩を仕掛けた事が無い。 その身にふりかかる火の粉を払って来ただけだった。   傷が痛む。   黒田の顔を踏みつけて、勝ち誇り、嘲笑う声が頭に響く。   その度に心の中で、否、体の中で、黒いモノが沸き上がる。   それを吐き出したくてたまらなかった。   自分より弱い奴を殴ってさっぱりしたい。   負けたくない。   絶対に勝つ喧嘩がしたい。   肩が触れた。
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