一滴の雫

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春うらら、ほんのりと暖かい朝。 私は、のどかな朝には全く似つかわしなく有様で、バタバタと慌てふためいていた。 「文香ー!早くしないと!」 「今、行きまーす!」 今日は、珍しくスーツを着て行かないといけなかったのを忘れていて、出勤準備に手間取った。 そんなドジな私を、私の愛しい人が急かす。 「俺、エントランス前に車回しとくからー!」 「はーい!」 昨日、彼は社用車で帰宅したから、その車で出勤しないといけない。 彼の会社の通り掛かりに私の会社があるので、私も一緒にその車に便乗して出勤だ。 「戸締まり、よし!」 将さん、もう待ってるかな? 急がないと! 私は玄関の鍵を閉め、社会人3年目になっても履き馴れないパンプスによたよたしながら、マンションのエレベーターに乗り込んだ。 ・
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