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外は案の定寒かった。
私はとっさにコートのポケットに手を入れていたのだけれど、よう子ちゃんは無邪気に素手で雪を掴んだりしていた。
街はまだ暗い。
冷たい空気の中を、白い息を吐きながら駆けていく。
それはとても昂揚することだった。
「やっぱり寒い」
よう子ちゃんが私のそばに来て、私のポケットに手を差し入れた。
ポケットの中は一瞬で冷たい空気に侵食されて、徐々に二人の手の温度が等しくなっていく。
「今年はよく雪が降るね」
よう子ちゃんがマフラーに顔をうずめながら呟く。
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