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走ってその場を後にすれば、さっさと部屋に引っ込めば、1人になって気持ちも落ち着くのだろう。
でも、オレの足はそれをしなかった。
背中一杯で気配を感じ取る。
カッカと頭に血が上っていようとも、耳がちゃんとその音を捉えた。
急ぎもしない、だけど意志を持ってこちらに近づく足音。
それが誰のモノかなんて、振り向かなくてもワカってる。
廊下の角を曲がり、中庭に出る足を止めた。
(いち、に、さん、し……)
瑠一の歩幅を思い、角までの歩数を数える。
15まで数えたところで、止めていた足を踏み出した。
走って追いかけてきて捕まえようとはしないところに、
オレの自由にさせるつもりなのだと確信した。
「放し飼いのつもりかよ……」
追尾する瑠一の行動に、嬉しさよりも寂しさが幾分勝ってる気がした。
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