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「お父さんは、口から血を吐いて倒れていたわ。それでもまだ生きていたの。だから、私が止めを刺した」
「君も、見えざる犯人だったのか……!?」
「ええ。後頭部を殴ってね。あの辺は、石も多いから」
雪美は冬美に刃を向けて、近付いていく。冬美はたじろぎ、後退する。
僕は咄嗟にその間に割り込んだ。
「やめろ、やめるんだ。これ以上罪を重ねるな!」
「お母さんも生きていた。今日学校に行く時、襖を開けて驚いたわ。だって、虫の息になったお母さんがいたんだもん。だから、もう一度刃を突き立てて、楽にしてあげたわ。
全く、冬美は昔からそう。遊んだ玩具をその辺に投げたままにしてたからね」
雪美が僕と一人分距離を空けて、立ち止まる。血生臭さが背後から漂ってきた。そして、目線の下で銀色の刃が光を反射している。
どうする。どう対処すればいい。
悩む僕の背中に、冬美がしがみついた。その手は震え、本当に怯えているのが解る。
「わ、わ、私は、私はあんたなんか大嫌いよ! 嫌、来ないでよ!」
「貴女が罪を犯す度に穴が開く。私が完璧にそれを隠してきた。でも、もうそれもおしまい。本当に愛しているのよ、冬美。だから私が貴女を楽にしてあげる」
雪美の足が一歩出た。それと同時に、冬美は寝室の奥へと逃げ出す。僕は雪美の道を阻んだ。
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