それは坂の終わりへ

12/14
2670人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
「お父さんは、口から血を吐いて倒れていたわ。それでもまだ生きていたの。だから、私が止めを刺した」 「君も、見えざる犯人だったのか……!?」 「ええ。後頭部を殴ってね。あの辺は、石も多いから」  雪美は冬美に刃を向けて、近付いていく。冬美はたじろぎ、後退する。  僕は咄嗟にその間に割り込んだ。 「やめろ、やめるんだ。これ以上罪を重ねるな!」 「お母さんも生きていた。今日学校に行く時、襖を開けて驚いたわ。だって、虫の息になったお母さんがいたんだもん。だから、もう一度刃を突き立てて、楽にしてあげたわ。 全く、冬美は昔からそう。遊んだ玩具をその辺に投げたままにしてたからね」  雪美が僕と一人分距離を空けて、立ち止まる。血生臭さが背後から漂ってきた。そして、目線の下で銀色の刃が光を反射している。  どうする。どう対処すればいい。  悩む僕の背中に、冬美がしがみついた。その手は震え、本当に怯えているのが解る。 「わ、わ、私は、私はあんたなんか大嫌いよ! 嫌、来ないでよ!」 「貴女が罪を犯す度に穴が開く。私が完璧にそれを隠してきた。でも、もうそれもおしまい。本当に愛しているのよ、冬美。だから私が貴女を楽にしてあげる」  雪美の足が一歩出た。それと同時に、冬美は寝室の奥へと逃げ出す。僕は雪美の道を阻んだ。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!