始まり

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その国は荒廃していた。 季節は冬。 昨日降った雪が地面を濡らしていて、普段から歩き辛い。石は地に埋まり、草の生えた道は一歩踏み出せば足をとられていく。 辛うじて水の引いた道も、地面が踏み固まる事はない。人通りの無い町に、幼い、四歳程の少女が、とうに主を失った廃屋に寄り掛かって座っていた。 少女が身に纏っている物は、冬なのに薄い麻布一枚だ。袖から伸びる腕は木のように細く、爪は伸びきっていた。 少女は母や父を待っているわけではない。 この国は王が不在の時期がもう16年も続いている。政治が行なわれない国は統べられる事がない。 それにより、子供が捨てられる事は頻繁にあった。そして、この少女も例外ではなかったのだ。 ー信じなくていい… 人なんて…大人なんて… 一人で、生きていける…ー 少女はそう、自分に言い聞かせた。 少女の前には焼け焦げた建物だけが風で灰を撒き散らしながら佇むだけだ。 そんな少女の前に、一人の女が座り込んだ。
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