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横溝さんが近道を知ってるって言うから、みんな信じてついてきたのに…
一体全体どうなってんのよ。
尾高山、山頂からの下山コースで、訳わかんない道に入っちゃって…
さっきの林道、行き止まりだったじゃんか。
もう1時間以上も、同じような道を行ったり来たり..
ずっと歩き続けてるけど標識が見つからない。
「これって、もしかして遭難かなぁ?
…ねぇ、梶山さん..」
小原さんは相変わらずの呑気声で私に話しかける。
小原さんは白いブラウスとフレアスカート…
全身を白でコーディネートしていて、とってもオシャレ。
清潔感に溢れていた。
「まさか…
こんな都心に近いハイキングコースで遭難なんてバカじゃん!
あはは..」
私は平静を装ってはいたが、土地勘がないからお手上げ状態だ。
ずっとイライラしっぱなしの私は新しい煙草にライターで火をつけた。
「梶山さんは煙草が好きなんですねぇ。
私なんか、怖くって吸えないですゥ…」
小原さんは、可愛らしく微笑んだ。
私はジーンズのミニにピンクのジャケット…
小原さんには差をつけられてる。
私は内心では見え透いた可愛い子ぶりっこの小原さんが大嫌いだった。
私達は三郷大学の映画研究会のメンバー有志で新入生歓迎と親睦を兼ねて尾高山にハイキングに来ていた。
メンバーは三年生の森村健さん、横溝典子さん、二年生の西村光太郎さん、小原幹恵さんと私、梶山和美…それから新入生の大沢玲於奈さんと赤川浅葱さんの七名といった顔ぶれだ。
私達は、尾根から外れ巻き道を通り、枝道に入ってから標識を見かけなくなって…それから迷い始めた。
私達は濃い緑の葉を繁らせ、うっそうとしたカシなどの常緑広葉樹林の森の斜面の林道をさまよい歩いていた。
林道に入ってから10分ほど、同じ風景が延々と続いている…
磁石なんて誰も持っていない。
段々、不安になってきた。
尾高山には電波が届かないので携帯電話の通信通話が全然できない。
もし遭難でもしたら携帯では助けを呼べないから凄い不安。
暗くなる前に正式な登山道にでないとヤバいよ…
空はどんよりとした薄黒い雲で覆われている。
天気が崩れそうな予感!
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