3.真っ白な世界 

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「思い出せないか?」 手に取って無言のまま固まる私に 晋作さんが声をかける。 「晋作、  焦らせてはいけないよ」 義助さんはそうやって言ってくれたけど、 何……。 どうして? 私の物だって教えてくれたそれを どんなに見つめても、見慣れないものばかりで 触れても何も思い出せない。 考えようとすると、 靄がかかってひどい頭痛が押し寄せるだけ。 でも思い出さなきゃ。 私……誰なの? 何で……ここにいるの? 「おいっ。  無理するな」 「そうだよ。  無理しなくていいから」 二人はそう言ってパニックになりそうな 私の背中をさすってくれる。 「高杉、久坂出掛ける時間だ」 いきなり襖が開いて、 もう一人の見慣れない人が顔を見せる。 「栄太郎、  今、行きます」 義助さんは立ち上がると ゆっくりと部屋を出て行った。
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