拾八

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「今のところ、異常ありませんね」 京の街を歩きながら、翔は息をはいた。 今日は新選組一番隊の見廻りの日。 今の時刻が夜中ということもあり、暗闇と不気味な静けさが辺りに漂う。 はじめは、翔が犯人と疑われてから初ということもあり、緊張していたのだが、何事もなく終わろうとしていた。 その時。 パァンっ。 この時代ではあまり聞きなれない音が響いた。 咄嗟に音に振り返った翔の頬を熱い何かが通り過ぎた。 「ぐぁっ」 後ろにいた平隊士が呻きをあげながら腕をおさえる。 紅い血が滴り落ちた。 来たか。 翔は負傷した隊士を端へおしやり、頬を乱暴に拭う。 「深追いはしないで。集中して」 沖田の命令が飛ぶ。 翔は瞳を凝らして見た先に、黒ずくめの衣装で動く者の姿を捉えた。 「沖田さん、前方に三人います。銃を持ってるのは1人のようで。1人は弓矢。三人とも腰に刀を差しています」 冷静に、翔は撃たれた隊士の傷口に布を巻きながら、他の隊士にも聞こえるよう、見えた情報を口にした。 「わかりました」 沖田は頷くと、前方に向かって走り出す。 そのあとを翔を含めた隊士達がついて行く。 ビュッと風を切る音同時にと、沖田は刀を振る。 足元に数本の弓矢が落ちていて、それは沖田がはたき落としたものだとわかる。 あっという間に敵との距離を縮め、他の隊士にも、黒ずくめの男たちが視界に捉えることができた。
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