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恒例の遠距離会話をした後、お母さんは夕陽が隠れてしまう前にマンションへと帰ってきた。
「お帰り。お母さん……あ、そうだ。来週末から忙しくなるからココに餌よろしくね」
靴からスリッパへと履き替えると、慣れた動作で上着を脱ぐお母さんの背中に語りかける。
「え? どうして?」
傍にあったH.Rに渡されたプリントをお母さんに差し出す。
「体育祭。忙しいんだよ二学期って……」
お母さんはプリントを眺めるのと私の話を同時進行させながら頷く。
そんなお母さんから離れ、説明をしながらキッチンへと向かう。
「体育祭の後に続けるように文化祭だし。毎年なんでこの行事の一つでも一学期にまわせないかなって思うよ。秋は騒ぎたくなる季節って分からなくもないけどね」
「智亜美、役員になったの?」
冷蔵庫から冷たい水を手に取ると、椅子に腰掛けるお母さんに手渡す。
「違う違う……練習だよ」
トテトテ……。
テーブルの下を潜り抜けると玩具みたいな足音を立て、ココは我関せずと水分の補給する。
そんなココに私は近寄り、様子を見ながら頭を撫でる。
「放課後に残るんだよ。体育祭の練習でね」
「そう、大変ね」
手渡した水を一口飲むとテーブルに置き、上着を背もたれに掛ける。
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