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「――そこで何をしている」
地を這うような低い声が響いた。階段の下に、教材を脇に抱えた城崎が立っていた。
げ、出た。秋穂は嫌そうに呟いて、ぱっと新垣から手を離しその背中に身を隠す。
「隠れるということは、何か後ろめたいことでもあるのか?真島」
「そんな、後ろめたいことなんて何もありません」
「新垣。俺は真島に訊いてるんだ。お前じゃなく、お前の後ろにいる真島秋穂に、だ」
新垣はむっとした。
城崎は、階段を一段一段ゆっくりと上って迫って来る。観念したように秋穂は新垣の背後から姿を現した。
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