絶体絶命

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――――ここは裕福な城下町、ジルバタウン。 世界でもかなりの領土と兵力を誇る、ジルバ王国の首都であり、国の中心に位置する町。 様々な人種がここに在住し、互いに思いやりを持って暮らしている。 白レンガで彩られた円状の町の中央には、同じく白く輝く巨大な城。 この国の王が住む、歴史ある立派な城だ。 それを囲むようにして存在する城下町は、良き王に治められ、治安もよく今日も平和だ。 市場ではたくさんの人がにぎわい、建国100周年に設立された記念公園では、観光名所でもある“ジルバ時計台”を背景に写真を撮っている。 町の西端は海に面しており、他の国との貿易も盛んだ。 今日も日の出と共に平和が訪れ、多くの人々がそれを感じることもなく、いつも通りの生活を始める。 物を売り買いし、食事をして働き、風呂に入って眠りにつく。 この国は、戦争とはまさに無縁だ。 国内で起こる犯罪も、他の国と比べてあまりに少ない。 そんな城下町を歩く、一人の男がいた。 ボサボサだが、鮮やかな金色の髪。目付きは悪いが、美しい青の瞳。 不機嫌そうな表情を浮かべているが、顔立ちはいい。 白いシャツに青いコートを羽織り、赤と緑のチェックが入ったスボンという格好をしているが、スタイルはいい。 容姿はともかく、彼はこの平和な町に住む、平凡な住民だ。 ただ、他と違うのは営む職業。 そして、今の状況。 裕福な城下町に住んでいながら、彼は一文無しだった。 故に不機嫌。 「腹減った……」 口を開くより先に、腹部から音が鳴る。 足取りも、何やら重そうだ。
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