ルックスランド地下街

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しかし、Bランク秘宝の“フルフルの蹄”から放たれる紫電は、刀で防げるものではない。 警備員は次々に倒され、彼一人でも十分切り抜けられる状況だった。 「うし、とりあえずは終わったな」 深呼吸の後で、かざしていた両手を下げる。 電撃を受けた大男達は全員その意識を奪われ、立ち上がることはない。 「俺に戦闘は無理だ、悪いがこの先もよろしく頼む」 きっぱりと言い張るライスに対し、トニーは不満げな表情。 そして何か言い返す前に、顔めがけて青い布を投げ渡された。 「っぷ、なんだよ?」 「せっかく警備員の格好をしてるんだ、顔を隠して進んだ方がいいぞ? 俺も今から顔を変えるから、少し待て」 そう言って、ライスが取り出したのは赤く四角い小さな木箱。 それは折りたたみ式になっており、彼が手際よく木箱を開けると中から長い板の列が現れた。 その板のひとつひとつに、美しい煌めきを放つ鏡が取りつけられている。 鏡は合計七枚。そしてそれは、ライスが持つ自慢の宝具だ。 「見るのは久々だな」 言われた通り布を顔に巻きながら、トニーは感心の意を込めてつぶやく。 “姿を写す七面鏡”。 それが、“シフトフェイス”と呼ばれるライスの宝具の名だ。 「どれにしようか」 七枚の鏡には、それぞれ別の人物が映っている。 ライスは迷った挙句に、その中の栗色の髪をした青年と目を合わせた。 すると、先程まで黒人だったライスが栗色の髪の青年に変化する。 その青年が映っていた鏡には黒人の姿。 文字通り、鏡に映った人物と入れ換わったのだ。 「さて、堂々と進むか」 木箱を折りたたみ、鏡を収納する。 「相変わらずの早業だな」 「“解宝”はできない宝具だからな、これが変化の最高速度さ」 懐に木箱をしまい、首の関節を鳴らす栗色髪の青年、ライス。 彼は自身の宝具で女にもなれる。変装のスペシャリストと呼ばれる所以は、この“姿を写す七面鏡”を所持して使いこなしているからだろう。 「戦える宝具が欲しいって思わねぇのか?」 「いらんいらん、俺は野蛮なことは嫌いでね」 落ち着きを取り戻した二人は、立方体に向けて前進していく。 そこで早くも、前から一人の警備員が歩いてきた。
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