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『ねえねえ佐吉、私ね、佐吉のお嫁さんになりたいなぁ』
『…し、仕方ないなぁ。秀吉様が許してくれたら俺の嫁さんにしてやるよっ!』
―…薄れゆく意識の中
思い出した一つの約束
私を抱き締めて泣きじゃくるお前は……まだ私を想ってくれているのだろうか……
止め処なく溢れる鮮血は、私の全てを浚っていく
怒りも、憎しみも…私は私という呪縛から解かれたのだ…
もう私を責め立てる声は聞こえない、浴びせられる冷たい視線も感じない……
嗚呼…最後に触れた温もりが
お前でよかった…
こんなに温かで優しいものが
近くにあったというのに
逝く間際になるまで気付けなかったとは…なんと愚かな事だろうか…。
約束を果たせぬまま逝く私を………俺を許して欲しい……
全ての感覚が、麻痺するように失われ
私はゆっくりと目を閉じた
もしもまた、お前と逢えるのならば
今度はもうお前を離さない
私の隣にずっと居てくれ…―――
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