6人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「えー、○○王国の繁栄に、乾杯!」
「乾杯!」
会場の全員が唱和し、今夜、最大のパーティーが始まった。
「お飲物をどうぞ」
営業用のスマイルで、アーミスは接客に臨む。
「ほんと、お前って外面いいよな」
先輩が近づいてきて、ボソッと言った。
「うっさいですよ。先輩ももうちょっと笑顔にならないと人気でませんよ」
「でなくてもいいわ。アホ!」
ウェイター達の、口を動かさない言い合いは少しヒートアップする。
「そんなこと言って~。先輩、あそこの子とか好みじゃないですか?」
「はっ!なにが好みだ」
「え、でも、あの太ももからお尻にかけたラインがぁ」
「どこどこ?」
「あ、おっさんでした」
「このやろう!!」
今にも掴みかかりそうな勢いでボソボソ言い合いをしていると、更に先輩が恐い顔で歩み寄ってきた。
「アーミス、デムロ、うるさいぞ。殺気出すな。特にデムロ。先輩のお前が止めなきゃいけないだろ」
「はい……」
シュンとする先輩に、アーミスは慰めの眼差しをかける。
「どんまいです。先輩。まあ、さっきのは完全に反論できないお叱りでしたからね。仕方ないですけど」
「お前もだろ!!」
先輩はギラリと最後に一睨みし、ズンズンと歩いていってしまった。
その荒々しさに、アーミスは心の中で舌を出した。
「あ~あ。……ちょっとやりすぎたか。」
反省しつつ、会場を出る。落ち込んだときに行くのは、いつも決まって甲板だ。
「うぅ……調子のりすぎたなぁ……どーしよ。明日から声かけてもらえなくなったら」
うなだれて甲板へ出ると、甲板にはもう先客がいた。
黒くて、長い髪。海を眺める横顔は、どこか憂いを秘めているよう。
美人の常套句が本気で似合う、そんな女性だった。
潮風に吹かれ、長い髪がふわっと舞い上がる。と、同時に、かぶっていた麦わら帽子が空へ飛んでいった。
「あ……」
麦わら帽子に手を伸ばす彼女は、今にも船の外へ落ちていきそうで___
最初のコメントを投稿しよう!