嵐の予兆

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「えー、○○王国の繁栄に、乾杯!」 「乾杯!」  会場の全員が唱和し、今夜、最大のパーティーが始まった。 「お飲物をどうぞ」  営業用のスマイルで、アーミスは接客に臨む。 「ほんと、お前って外面いいよな」  先輩が近づいてきて、ボソッと言った。 「うっさいですよ。先輩ももうちょっと笑顔にならないと人気でませんよ」 「でなくてもいいわ。アホ!」  ウェイター達の、口を動かさない言い合いは少しヒートアップする。 「そんなこと言って~。先輩、あそこの子とか好みじゃないですか?」 「はっ!なにが好みだ」 「え、でも、あの太ももからお尻にかけたラインがぁ」 「どこどこ?」 「あ、おっさんでした」 「このやろう!!」  今にも掴みかかりそうな勢いでボソボソ言い合いをしていると、更に先輩が恐い顔で歩み寄ってきた。 「アーミス、デムロ、うるさいぞ。殺気出すな。特にデムロ。先輩のお前が止めなきゃいけないだろ」 「はい……」  シュンとする先輩に、アーミスは慰めの眼差しをかける。 「どんまいです。先輩。まあ、さっきのは完全に反論できないお叱りでしたからね。仕方ないですけど」 「お前もだろ!!」  先輩はギラリと最後に一睨みし、ズンズンと歩いていってしまった。  その荒々しさに、アーミスは心の中で舌を出した。 「あ~あ。……ちょっとやりすぎたか。」  反省しつつ、会場を出る。落ち込んだときに行くのは、いつも決まって甲板だ。 「うぅ……調子のりすぎたなぁ……どーしよ。明日から声かけてもらえなくなったら」  うなだれて甲板へ出ると、甲板にはもう先客がいた。  黒くて、長い髪。海を眺める横顔は、どこか憂いを秘めているよう。  美人の常套句が本気で似合う、そんな女性だった。  潮風に吹かれ、長い髪がふわっと舞い上がる。と、同時に、かぶっていた麦わら帽子が空へ飛んでいった。 「あ……」  麦わら帽子に手を伸ばす彼女は、今にも船の外へ落ちていきそうで___
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