風変わりな出会い

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4月。 人々が新たなスタートをきるこの季節。 私・大嶋彩乃(オオシマ アヤノ)も、今日から高校生になる、はずなんだけど……… 「ぎゃーー!遅刻するーー!」 入学早々遅刻の危機に陥っています。 でも、理由は寝坊じゃない。 私は、割と早起きなほうだし、今朝も時間通りに起床した。 それでも遅刻しそうなのは、“あの人”のせいだ。 “あの人”っていうのは……… ダダダダダダ その時、廊下を走るうるさい音が聞こえた。 「彩乃ーーー!!」 でっ出た! 「彩乃!初日から遅刻とは、何事じゃ!!」 派手に登場してくれたのは、私の祖父・大嶋源之助(ゲンノスケ)。 70歳は越えてるくせに、『超』が100個つくくらい元気で、空手道場の師匠をやっている。 ちなみに、私もじいちゃんに空手を教えてもらってる。 「根性が足りないんじゃ!さっきわしが教えたことを忘れたのかぁ!」 「うるさーい!じいちゃんの説教が長すぎたから、遅れそうなんだよ!」 そう、遅刻の原因の“あの人”とは、じいちゃんのこと。 じいちゃんは、事ある度に、私に説教をする。 今日も、朝起きてすぐに道場に連れて行かれて、無理矢理正座させられてしまった。 私が高校入学ということで、源之助流の“人生の心得”を、朝っぱらから長々と聞かされた。 確かに善いこと言ってたよ。 でも………… 「3時間は長すぎんだよ!おかげで、せっかく早起きしたのに、遅刻ギリギリじゃねえかっ。」 「長いだと!?あれでも短いくらいだわい。」 「はあ?」 あれで短いとかおかしいでしょ。 私なんか、足が痺れて大変だったのに。 私とじいちゃんが言い争っていると、落ち着いた声が聞こえた。 「まあまあ、2人とも。朝から喧嘩はやめて下さい。」 「お母さん!」 現れたのは、私の母・彩美(アヤミ)。 お母さんは、私のスクールバッグを持って、にこにこしていた。 「彩乃、かばん持って。早く行かないと。お義父さんは、道場に戻って下さい。朝稽古が始まりますよ。」 やたら厳しいじいちゃんと比べて、お母さんはまるで菩薩様のよう。 そんなお母さんには、じいちゃんもなぜか素直だ。 「そうだったな。ありがとう、彩美さん。」 『ありがとう、彩美さん。』だあ? 何で私とお母さんで、対応が違うわけ? 俗に、これを差別って言うんだよね。うん。
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