プロローグ

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「俺にはリスクは何もないです。だから始まりの合図は里佳さんが出して下さい。」 彼はそういうと優しく澄んだ眼で私を見つめる。 そこには10年前の私が、おかしくなるなる程に欲した、彼の姿があった。 いけないことだとは解っている。 だけど… 部屋の中に入るまでとは裏腹に、もう迷いは消え失せていた。 私は、そっと彼の頬に手を当て、少し背伸びをして、ゆっくりと顔を近付ける。 意識を集中してないと気付かない程に微かに、唇が触れ、痺れるような感覚が体を走る。 これが私にとって精一杯の始まりの合図だった。 .
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