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「ほう…さすがは新撰組の掟。組頭が死ねば、組の者はその場で戦死を遂げよ、と…」
「戦死ではなく死戦だ。死ぬ気で戦えってことで、その場で死ねと言ってるわけではない」
「死ぬ気で戦え、ですか。死ねと言うのとどう違うのですか?」
「全く違う!一緒にするな」
「…聞き捨てなりませんね。頭が死ねば、それに従事する者も死を選び、自ら腹を裂く。
これこそ武士として美しい姿ではないのですか?」
「ふ、二人とも、ちょっと落ち着いてよ」
「そうだぞ。その辺にしておいた方が…」
平助、近藤が止めに入る中、山南だけはその様子を黙って見つめていた。
「いいや近藤さん、悪いが俺は言わせてもらうぜ。
伊東さん、俺たちは確かに武士だ。
本物の武士であろうとしている。
切腹というのは、隊規にもある通り武士としての一つの生き様だ。
だがそれはいつでもどこでも命を捨てていいという意味ではない!
最後の一人になっても戦い続ける意思を持たなければ、ただの鉄砲玉と同じだ。
俺たちは……俺たちの誠を貫く!」
土方の言葉で、伊東はきょとんとした表情を見せたが、次の瞬間…
「ククク……ハハハハハ……」
突然笑い出した伊東に、土方だけでなく、その場にいた近藤や山南、平助までもが目を丸くした。
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