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「……で、何でここに来たんだ?」
「へ? それはお前……あれだよ。可愛い可愛い弟分のアレン君が目を覚ましたって、麗しのレナちゃんから聞いたから駆け付けたの」
「……全く走る足音聞こえなかった。嘘だろ」
「バレたか」
そう言い、笑うレイン。
アレンも僅かながら微笑んだ。
「……アレン、お前さっきまで泣いてただろ」
唐突に扉越しの彼がそう言った。
思わず心臓が跳ねる。扉越しなのに何故分かったのだろう。
先程まで流れ続けていた涙の跡を指でなぞり、憂いの表情を浮かべる。全く、この男は何でもお見通しなようだ。
「……気持ち悪いくらい分かるんだな……」
「気持ち悪い言うなっての!」
レインのおちゃらけた砕けた話し方にひどく安心する。目が覚めて食事をしても生きた心地がせず、ずっと宙に浮いたような感じだった。
それが漸く、すとんと地に足を付けれたような感覚に陥った。地に足を付けてくれたのは、他でもないレインで。
自分にとってかけがえのない人間だ。普段は飄々として本気で冗談か判らない事をよく言うが、今はそれが心地よくて安心する。
だから──もうこれ以上は一緒にいれないと悟った。途端に脳内で響き渡るその声に、ハッとして顔を歪める。
──そうだ。俺がここにいたら、またデビルアークが来るかもしれない。ここから、離れなければいけない。
あの組織は光の子である自分を殺害を企てている。ここに留まれば、再び自分を狙いデビルアークが襲撃してくる可能性がある。
そうなれば今度は無関係な街の人々にも危害が及ぶことになる。これ以上、誰かが目の前で傷付くのはうんざりだ。
どこか遠くへ。周りに被害が行かないよう遠くへ離れなければ。幸い、傷はレナのお陰か医者のお陰かほぼ癒えている。
五日も眠っていたそうだが、病院からこっそり抜け出すぐらいの体力はあるだろう。出て行くのは、なるべく早い方がいい。
悶々と考えているとレインが、恐らくいつも通りの笑みを湛えながらだろう声音で話し出した。
「なあアレン……お前、ここから離れる気だろ」
驚きで心臓が高鳴った。何故いちいち解るんだ。アスリナの読心術を直伝されたのかと思えるぐらい的確にレインは指摘してきた。
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