日記

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私はムキになりかけていた。 (どうしてこうも真っ直ぐに言えるの? 私のどこがそんなにいいのよ!! こんな…こんなにも醜い私を!!) 私の心に入り込もうとするように滉が真っ直ぐ私を見つめる。 その強い意志を持った瞳に…少しだけ篤史さんの面影を見付けてしまった。 「放して…本当に帰るから…」 消沈した感情が私を冷静に戻した。 「じゃあ俺たち…いつになったら…」 切なそうに目を細め滉が呟いた。 (止めて…篤史さんに似た目で…私を見ないで…) 「この先…ないわ…。 私とあなたが…仕事で繋がってる限り」 「え…」 一瞬緩んだ滉の手 その隙に私は彼から逃れ玄関に向かい出て行った。 ドアが閉まる音が聞こえた。 (行っちまった…) 肩の感触が残る手。 抱き締めた温もりが残る腕。 拒絶の言葉のように聞こえたドアの音。 交わらない気持ち。 俺は茫然と立ち尽くした。 「なんだよ…あの理由…。 そんなの…俺らの世界ではいくらでもある話じゃねぇか…。 なのに…なんでそんな理由で括っちまうんだよ!!」 滉の叫びは静かな部屋に虚しくかき消えた。 .
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