0、…………。

2/2
3304人が本棚に入れています
本棚に追加
/662ページ
「席なら、あの死ぬほど幽霊背負った傷男の隣ね。決定」 夏休み明け。 まだ蝉が煩く、蚊がまだまだ元気に血液採取に勤しむ季節。 そいつはやって来た。 目付きの悪い黒髪美少女転校生。それだけで注目の的だと言うのに、よりにもよってこの俺を指差しやがった。 当然のようにクラスは静まり返り、担任は苦笑い。かく言う俺も開いた口が塞がらない。 他クラスの担任の声、硝子を突き抜けて届く蝉の鳴き声、冷風を送り出すエアコンの音に時計の秒針の音。 それ以外は時間が停滞しているように動かない。そこに作り出されるはずではなかった沈黙を破ったのも、これまた転校生だった。 スタスタと机と机の間を歩く。クラスの誰しもが彼女を目で追い、注目する。 そして、呆然と座る俺の隣に立つと、彼女は左隣の男子にこう言い放った。 「何してるの? 早く席を空けなさい。これは決定事項。さぁ、立てドブ男」 悪夢の始まりだった。
/662ページ

最初のコメントを投稿しよう!