Quest.2 『酒と仲間と男と女』

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「う、ううん……」 俺がマロに苦笑いを返していると、倒れていたシルヴィアが息を吹き返した。 「気がついたか?」 おぼろ気に俺を見つめる表情で、この人格がヨッパ・ライドオンでないのはすぐにわかった。 「わたくし、いったい何が……痛っ!」 シルヴィアは体を起こそうとしたが、急激な痛みに肩を押さえてくずおれる。 「無理をするでない、三日ほどは寝ておるがよいぞよ」 峰打ちで全治三日かよ。 えげつねえな。 「すみません……それより、これは?」 仰向けに横たわったまま、目と首だけで辺りを見渡すシルヴィア。 砕けた椅子、えぐれた壁、歪みひび割れたドア。 夜空を切り取ったようなその瞳に、この惨状はどう映っているのだろうか。 「これは、わたくしがやったのですね……」 「見覚えがある光景か?」 「はい……あの日わたくしが目覚めた時も、そこら中に壊された跡がありました……」 やっぱり、あのヨッパ・ライドオンの傍若無人ぶりなら、意識を取り戻したあとにも何らかの後遺症があると思ったんだ。 例えば、暴れすぎて体を痛めたり、その場にいた者から後に抗議があったりとかな。 つまりシルヴィアは、全く身に覚えがないと言いつつ、少しは自覚していたってことだ。 だけど、自分の中にそんな凶暴な人格が潜んでいるとは信じたくなくて、もう一度試してみたかったんだろう。 もし仮に暴走してしまっても、旅なれた冒険者なら力ずくで止めてくれるはずだと思ってな。 まあ、俺は、床に転がってただけだったわけだが。
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