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「う、ううん……」
俺がマロに苦笑いを返していると、倒れていたシルヴィアが息を吹き返した。
「気がついたか?」
おぼろ気に俺を見つめる表情で、この人格がヨッパ・ライドオンでないのはすぐにわかった。
「わたくし、いったい何が……痛っ!」
シルヴィアは体を起こそうとしたが、急激な痛みに肩を押さえてくずおれる。
「無理をするでない、三日ほどは寝ておるがよいぞよ」
峰打ちで全治三日かよ。
えげつねえな。
「すみません……それより、これは?」
仰向けに横たわったまま、目と首だけで辺りを見渡すシルヴィア。
砕けた椅子、えぐれた壁、歪みひび割れたドア。
夜空を切り取ったようなその瞳に、この惨状はどう映っているのだろうか。
「これは、わたくしがやったのですね……」
「見覚えがある光景か?」
「はい……あの日わたくしが目覚めた時も、そこら中に壊された跡がありました……」
やっぱり、あのヨッパ・ライドオンの傍若無人ぶりなら、意識を取り戻したあとにも何らかの後遺症があると思ったんだ。
例えば、暴れすぎて体を痛めたり、その場にいた者から後に抗議があったりとかな。
つまりシルヴィアは、全く身に覚えがないと言いつつ、少しは自覚していたってことだ。
だけど、自分の中にそんな凶暴な人格が潜んでいるとは信じたくなくて、もう一度試してみたかったんだろう。
もし仮に暴走してしまっても、旅なれた冒険者なら力ずくで止めてくれるはずだと思ってな。
まあ、俺は、床に転がってただけだったわけだが。
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