二人の出会い

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
人々が寝静まって人工的な灯りではなく自然の明かりが街を照らす。月の光が海を照らし波の音が辺り一面に響き渡る静かな夜だ。ところどころに街灯はあるものの、月光の圧勝である。あんなちっぽけな灯りでは月明かりには勝ち目はない。しかも星がたくさん輝いているとくれば自然の明かりで十分明るいのだ。空は曇ってはおらず月がいつでも見えるような状態だ。満天の空で北極星など一等星を中心に輝いている。なんとも美しい夜だ。 そんな夜に一人の少女が高台から海を眺めていた。海を見る目は寂しそうだった。それを見かけた夏の化身である夏海は何を思ってかその姿をじっと見ていた。すると少女は優しい声で何かの歌を歌った。歌詞は切ないもので、どうやら最愛の人と離れてしまった旅人のようだった。 歌詞とか関係なくその歌声に高鳴った胸を抑えきれず夏海は少女に声を掛けた。 「綺麗な歌声だね」 少女はびっくりした様子で慌てて振り向いた。目を合わせてみると綺麗な容姿でふわふわした雰囲気、どこかのお姫様か令嬢だろうか。少女は目をぱちくりとさせて夏海を見ていた。 「あ、ありがとうございます」 少女は目を泳がせながら言うものだから夏海は頭の上にクエスチョンマークが浮かんだ。少女は自分の肩に掛かっているストールをとって夏海をチラチラと見ていた。ますます訳が分からず夏海が声掛けようとしたら少女は夏海に駆け寄ってきてストールを夏海の肩にかけた。 「お節介かもしれませんが夜は冷えますから……!!」 夏海はキョトンとしながらストールを見ていたら少女は走って行ってしまった。 「そんな気遣わなくて良かったのにねぇ」 夏海は困ったような表情を浮かべながらストールをとった。夏海は夏の化身なだけあって体温は高いし、このくらいの涼しさは何ともないのだ。だけどこのストールからほんのり温もりを感じて小さく笑った。夏海は先程の少女が少し気になってしまった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!