竜笛の音

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しばらく小さくうなってから目を開けた隆也は、目をこすりながら体を起こす。 「……どうかしましたか?」 「近くに、何かいるわ」 「何か!?」 青羽が頷く。 隆也の眠気は吹っ飛んだようだった。 「銀白たちは?」 「見当たらないの。  目覚めたら、ここにはわたしと水縞さんだけだったわ。  それに、サクラもいない」 「探しに行きますか?」 しかし、青羽が首を横に振る。 「ここから出ない方がいいわ。  きっと、銀白様たちは結界を張って出かけたはずよ。  下手に動くと、その方が危ない」 次第に、外の風が強くなってくる。 障子を揺らし、外で木々が揺れる。 そして、障子の外に束帯冠姿の男の影が映った。 「銀白か……?」 隆也の呟くような問いに答えたのは、青羽だった。 「違う。  あれは銀白様の妖気じゃない」 男は足を止め、障子越しに向き合った。 「もうし、ここを開けていただけませぬか」 「絶対開けちゃだめよ」 青羽の声が震えていた。 「この結界が破られたら、わたしが勝てるとは思えない」 「どうしますか?」 「このまま銀白様たちが帰るのを待つしかない」 外から語りかける声は続いている。 それは穏やかでありながらも、どこか冷気を帯びた低い声。 障子を開けろと懇願するその声は、次第に語気を強めていった。 「ここを開けよ。  そこにおるのは分かっておるのだぞ」 障子がさらに強く震えはじめた。 青羽も隆也も身を震わせながら、黙って耐えている。
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