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隆也は青羽の手を引いて、帝が入って来た入口とは反対側の障子を開けて走り出した。
本殿の中から唸り声が聞こえてくる。
そして、式神たちの悲鳴。
何かを引き裂く音。
ガタガタ音がしたのち、再びあの笑い声が聞こえてきた。
寺の廊下を走っていた隆也が後ろを振り向くと、束帯を着た鬼がすぐ後ろに迫っている。
そして、懸命に走る青羽の手を掴んだ。
「逃がさん」
「離せ!!」
青羽が悲鳴を上げ、隆也が唸り声を上げながら帝に掴みかかっていった。
「水縞さん!!」
「早く、走れ!!」
青羽はなんとか手を振りほどき、一気に走り出す。
隆也と帝から少し離れた場所につくと、再びいくつかの名前を呼んだ。
それにこたえるように現れる式神たち。
明らかに劣勢の隆也を援護していく。
「こんな屑ども、いくら出したって同じだぞ」
帝が赤く、牙のはえた口を大きく開け、地を揺るがすような声で吠えた。
式神たちは悲鳴を上げて姿を消す。
「青羽さん、早く走れ!!」
なんとか帝を床に引き倒した隆也が叫ぶ。
きつい腐敗臭が、隆也に吐き気を起こさせる。
必死に戦う隆也を振り返りながら、青羽は寺の敷地から走り去っていった。
「銀白様!!」
青羽が叫びながら走ってゆくのが聞こえる。
「おのれ!!」
帝が唸り声をあげ、隆也の首の付け根にかみついた。
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