篠崎 賢

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篠崎 賢

『被告を少女誘拐殺人の罪により、菜の花第二病棟の専属医師として着任することを命ずる』 二日前、裁判長により言い渡された言葉が再び頭の中で流れる。 前代未聞であろう刑罰に人々は、一体どんな反応をしているのだろうか。 判決後、ニュースや新聞を見ていないので、それを伺い知ることは出来ないが、恐らく今の自分と同じ感想だろう。 『そんなことがあっていいのか?』 1人の少女を誘拐し、そのうえ殺した人間に対する刑罰が、病棟にいる人間を治療することだなんて、一体それで誰が納得するのだろうか。 罪を犯した自分ですらそうなのだ、他の人がそう思わない訳がない。 「宮間、パーキングエリアは近いか?」 「そうですね、後10kmも走れば着きますが、佐古さん、またトイレですか?」 僕の横に座る筋肉質な男が、運転席に座る男にそう言い、彼もそれに返事をした。 どうやら筋肉質の男の名が佐古で、運転席に座る若い彼が宮間というらしい。 「違ぇよ、昼飯がまだだったろ。次のパーキングエリアで何か買ってきてもらおうと思ってな」 「ああ、了解です。篠崎、お前好き嫌いあるか?」 二人で話していたはずが、不意に宮間から話を振られる。 「えっ、いえ、ないです。おまかせします」 おっと、言ってから気付いたけど、まだ自分の分まで買ってくるなどと一言も言っていなかったのに、図々しくもおまかせしますなんて言ってしまった。 いや、まあ、そこまで聞いといて買わない人なんていないだろうけど。 「はいよ。佐古さんも篠崎もオニギリでいいですね」 「梅以外な」 「判ってますって」 再び二人は、談笑を始めだす。 僕は車内の窓に頭を押し当て、これからのことを考えた。 まず僕は、医師免許なんて物を持っていない。
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