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「ねえ唯人、覚えてる?
2ヶ月前にここでさ、」
噴水を指さして話すあたしを、
彼はさらりとかわす。
「あーうん、
直が俺に告ったんだよね。
…あ!あの店行きたい。
ほら行こ、直」
今ではもう前みたいに
あたしの手を優しく
引いてくれることはない。
彼は冷たい風のせいで
凍えそうな指をポケットに詰め
背中を向けて歩き出した。
今日は2ヶ月目の記念日なのに。
少しだけせつないけれど、
反論する訳にはいかない。
あたしはヒールを
コツコツと鳴らしながら、
遠ざかる彼に走り寄った。
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