Ⅸ 主人と犬

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side 神崎 岳菟(黒時の兄) 黒時が……泣いた…。 黒時から流れる涙を見た瞬間、頭に血がのぼった。 な……に泣かしてんだよ!? 岳菟が怒鳴ろうとしたその時、黒時が呟く様に言った。 『苦しいです、悲しいです。辛いんです。』 動揺を隠せない。 俺は咄嗟に黒時の方へ駆け寄った。 不自然に傾く黒時の体。 それを受け止めたのは前で泣きながら黒時の後ろにいる奴を睨みつけていた、冴縞と言う奴だった。 あと少しで黒時に触れられる時、黒時の後ろにいた奴が動いた。 ガシッ 「黒時、何してるの。行くよ。」 『っ……』 有ろうことかそいつは黒時の髪をわしずかみ すると無理矢理上へ引っ張った。 小さくうめき声をあげる黒時。 俺は目の前が真っ白になって髪を掴んでいるそいつを殴った。 チャリン 尻餅を付くそいつのポケットから出てきたモノは…………黒時が大切にしていた十字架だった。 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す そこからは良く覚えていない。 やけに拳が痛かった事や目の前の奴が血まみれで倒れていて、俺を止めてくれたのが蓮だった事ぐらいしか分からなかった。冴縞は、急いで黒時を保健室に運んだらしい。 良い友達いるじゃねぇか。 赤くなった拳の中には十字架が窓から注す太陽の光りで妖しく光っていた。 .
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