【リク5】中学校の同窓会

8/17
2496人が本棚に入れています
本棚に追加
/163ページ
「何だよその反応」 「だって谷川が素直に褒めてくれるから…」 「俺だって少しは成長したんだよ」 「……それは思ったよ」 あの頃は、俺も谷川もまだまだ子供で。 相手の気持ちを汲み取ることもできずにたくさん傷つけた。 「……見直したか?」 谷川は冗談めいたように、ふふんと笑って言った。 「そうだな。格好良くなった」 「ば…っ、そこまで言えとは言ってねぇ」 「何だよせっかく褒めたのに」 どぎまぎした様子で照れている谷川は、中学生の頃を彷彿とさせる。 「谷川は中学のときも、照れ屋のツンデレだったよな」 「うっせぇ……」 「ほら照れてる」 「からかうんじゃねぇよ」 こうやって話してると、あの頃を思い出す。 そういえば… 谷川と仲良くなったのは、谷川の想い人であった平峯さんの一件以降だ。 平峯さんにフラれて、そのときに俺が少しフォローに回ったからか… 妙に谷川と絡む機会が増えた気がする。 俺は当時の記憶に思いを馳せた。 「おい、坂月」 「………え、なに」 谷川が平峯さんにフラれて数日、あたしは平和な日々を過ごしていた。 特に谷川との関係性に変化はなく、奴は相変わらずあたしに対して辛辣な態度だ。 今は授業終わりの放課後、谷川は不機嫌そうな顔であたしに話しかけてきた。 何てことのない放課後。どうせまた、あたしに嫌味の一つでも言いに来たのだろう。 「ちょっと面貸せ」 「嫌だよ」 「なんだと?」 谷川はピクッと眉を動かす。 この俺に意見すんじゃねぇと言わんばかりの眼光で睨んでくる。 お前は亭主関白か。 「何でそうホイホイと面を貸さなくちゃなんないんだよ。あたしはこの後アニメの再放送があるから早く帰りたいんだ」 「これだからオタクはよぉ……」 オタクの何が悪い。オタクのおかげで日本の漫画産業は成り立ってると思え。 「オタクに笑う奴はオタクに泣くことになるんだよ。ってことで、オタクのあたしはあんたに応じない。じゃあな」 「おいおい、ちょっと待て!」 ガシッと手首を掴まれる。 予想外の出来事と痛みに、あたしはつい睨みつけてしまった。 「あ、わり……」 パッと手を放される。 一応謝るという常識はあるんだな…… 「一体何なんだよ。あたしの貴重な時間を取る罪は重いぞ」 「そんなの10円で十分だろ」 「人の時間を何だと思ってるんだ…」
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!