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朝、というものは必ずやってくる。それがたとえどんなに来るなと願っても、はやく来いと望んでも、かわらず、だ。
主観的なそれに大差はあれど、ともかくとして朝7時のアラームだけは私にとってあまりにも冷静に在るのだ。そう、極めて今日は冷静――というよりも、沈黙を保ったまま、過去を刻んでいた。
「このご時世、携帯様に頼るべきなのね」
一人ぽつんと呟くも、その携帯様が示す現在時刻8時30分は否定しえない現実なのだった。
「ああ、これはきっと夢ね。うん、悪夢だわ、神は私に寝ろと告げているに違いない、うん、そうに決まってる」
「……なんてーか。少しは焦るべきなんじゃねーですか」
ぶつくさ言っていれば、私天川憂の弟、天川享<とおる>は生意気にも私に説教をたれようとしている。ここは、姉の威厳をしめさねば。
「あ、ちなみに僕は創立記念日でお休みなのであしからず」
……たまには、弟をたててやるのも悪くない。うん、決して屈したわけではない。
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