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_都内某所、結川河川敷_
もうすぐ夏の暑さが来ようかという昼過ぎ。一人、男は橋からぼんやりと穏やかに流れる結川を見つめる。
身長は160cm後半、健全な男子高校生というには少しさえない顔つき…優男というべきか?
暇を弄んでいる時はだいたいこの場所へ来る。
健全な高校生ならば部活やバイトに励んでいる時間帯だろうが俺には関係無い事だ。
あ、申し遅れました。俺の名前は 神代ハキ といいます。
まぁどこにでもいる高校生ですよ(今の所は、ね)
まあやる事もなくぼぅーっとこの素晴らしき結川を眺めていたわけですが...
どんぶらこ~どんぶらこ~
「?」
いや本当に"その表現が正しいと思えるくらいゆっくり、ゆっくりとお尻が流れて行ったのさ。
「...。」
なんで助けないかって?ああ助けるさ、でもなぁ…
(第六感か何かは忘れたけど…するんだよ、“そういう予感”が)
凄く複雑な気持ちで流れる桃…じゃなくてお尻を抱える。
ザバァァ。
見ると赤の変わった服(ゲームで魔導士が着る服に似ている)を着ており頭に羽飾りのついたやたらデカイ帽子をかぶった琥珀色のウェーブがかった髪の女の子だ。
「と、とりあえず岸にあげて様子を見ないと…」
水を吸って多少は重みがあったが小柄な体つきなのか思ったよりも軽いかった。
岸に到着してゆっくりと下ろすと少女はすぐに意識を取り戻した。
どうやら人工呼吸のチャンスを逃してしまったようだ。
「っ!げほっごほっ!!」
「大丈夫か?」
「は...はぃ...え?」
「ん、どうかしたのか?」
「本が...」
「本...そんなの無かったぞ」
少女はしきりに辺りを見回して、はっとしてまた川へ入っていく。
「あったー!!!」
高らかに雄叫びをあげて頭の上にかざす。
かざした物は何やら辞典のような物。
そしてその辞典(?)をめくり一言、
「な...無くなってるーーーーッ!!!」
(あるのか無いのかはっきりしろよ...)
と思ったらザバザバと凄い剣幕で少女はこっちへ戻ってきた。
「あなた...ではないわね、」
即効否定ですか。なんにしても少し悲しいよ。
「何がどうした?」
「・・・無くなってる」
「へ?」だからなにが?
「影書が無いって言っているのよ!!」
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