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「おまえは殺してない」
佐藤はまだそう言う。
なんで。
なんで、そんなこと言えるの…?
「たぶん…俺の推測だけど、晴樹さんはおまえを守りたかっただけだと思う」
あたしを…?
次の日のインターハイより…?
「ホントに妹が大切だったから、なんにも考えずに、道路に飛び出した。もちろん、自分が死ぬことなんて全然考えてなかったと思う」
そして佐藤は、あたしの思考を見透かしたように続ける。
「晴樹さんが妹の命よりインターハイを優先するような人じゃないってことはおまえが一番知ってるだろ?」
その通りだった。
晴にいちゃんはインターハイの前日でもあたしのワガママをきいてくれた。
「だから、自分が殺したなんて思う必要ないんじゃねぇの」
佐藤の言葉に、あたしが抱えてきたものがすぅっと軽くなっていく。
晴にいちゃんが死んでしまった今となっては本当のことは分からない。
だけど、そう信じていい…?
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