消えた存在

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side.礼二 俺には、大切で大好きな片割れがいる。 大事で、大切で、欠点を補える、たった一人のもう一人の自分。 礼一。 俺はお前のためならなんだってできるんだ。 なんだって、 そう、なんだってだ。 でも、拒絶されたら…… ――――――――――――――― 「なんで、礼一には怒らないんだよ!!」 風紀室。 そこの黒い革張りの高級そうなソファーに座り、光景を眺める。 喚く物体。 それを面倒くさそうに見るのは、風紀委員長の舘林。 「周りの証言だと、お前が彼を突き飛ばしたのと彼に対しての暴言。それを止めたのが九条だと、目撃情報を貰っている。全員一致で同じ事を言っているからな」 彼とは突き飛ばされたチワワだ。 この場の空気が悪いせいか、俺の制服を掴んで震えている。 面食いだと思うが、まあ、恐いんだろう。 「…あの、お咎めなしなら帰ってもいいんでしょうか」 「あぁ、九条はここに残れ。生徒会が迎えに来る。そこのお前は風紀をひとり付ける」 そう委員長が言うと、ひとりの風紀委員が近寄って来た。 「九条君」 「放課後だし、仕事だよ。気を付けてな」 「うん、ありがとう」 俺より小さい女みたいな男子の頭を撫でて見送る。 残ったのはいつまでも喚いている奴と委員長。 書記さんは奥で静かに聞き取りをされているらしい。 ――コンコン 「入れ」 ガチャッと入って来たのは会長さんだった。 会長さんの姿を見て、テンションをあげる物体は無視しよう。 というか、会長さんがすでに無視している。 「九条、行くぞ」 「はーい…よいしょっ」 喚くしか知らないあいつは放置だ。 こういう場合、喚かない方が賢明と言う事をしろう。 理解できない事でも、本当にしていない事だけを主張するだけにして、 奴の場合は、自分の罪すら分かっていないのだが。 「大丈夫だったか」 「何が、よくわからないです」 「…そうか」 ここの役員達は、俺に何を求めているのだろう。 俺は俺。 俺でしかない。 だって、礼一は… てか、何で礼一を知っている。 俺はずっと俺だった。 でも、なんで、俺ここに通ってるんだ。
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