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「ほ、報告! グランサム国の軍隊がこちらに侵略中! その数、およそ三万!!」
サンクリア城の玉座の間に、兵士の震える声が響いた。
動揺する兵士の報告をアレクサンドル・カラリェーヴァ女王は険しい表情で聞いていた。
二十代半ばの凛々しく端正な顔立ちは現在焦燥感と苛立ちに染まっていた。
「西側、東側の状況はどうなっている!?」
普段なら聞き惚れするその声も今は険しさが感じられる。
「いずれも戦局は厳しく我々が不利なように思われます・・・・・・」
「・・・・・・そうか」
アレクサンドルは表情を更に険しくする。
現在、この国、アルセンはグランサム、デルス、パルタクの三国から同時に侵攻を受けていた。
この三国は別に同盟を結んでいる訳ではなく、(無論攻める時期に関しては恐らく合わせてはきているだろう)ただ一つの目的の為に攻めてきたのである。
この国にあるロストワールドの扉を狙って。
ロストワールド
この世界と繋がる異世界であり
危険な魔物が多く棲んでいるかわりに
高度な文明と豊富な資源がある世界である。
ロストワールドに行くには不定期に表れるロストホールから行く事が出来るが
不確定な要素が多く、効率よく収穫を得る事は出来なかった。
しかし、数年前この国は魔法によって
ロストワールドを自由に行き来出来る扉を出現させる事に成功した。
多くの犠牲を払いながらも国を発展させる事が出来たが
その高い魔法力を狙われ各国から侵略される事が度々あった。
そして現在
ロストワールドの恩恵によって得られた豊さは荒らされ
兵や住民は疲弊し滅亡の危機を迎えていた。
兵士の報告が終わると玉座の間に重苦しい沈黙がのしかかる。
玉座の間に控えている将軍達も滅亡の予感し恐怖を抑えていた。
そんな重苦しい空気を拭い去ろうとするように立ち上がり腰まで掛かるルビー色の髪を揺らす。
「陛下、どうなされたのです?」
将軍の一人がに尋ねる。
「ロストワールドの扉を開く」
アレクサンドルは早足で進みながら質問に答える。
それと同時に重苦しい空気にどよめきが走る
「へ、陛下・・・・・・まさかーー」
「そのまさかだ」
周りのどよめきをかき消すようにアレクサンドルは言葉を紡ぐ。
「開拓囚人0496を出す」
その言葉にその場の全員が声を失う。
玉座の間には先程とは異質の
しかし確実に濃い恐怖が広がっていった。
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