プロローグ

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 21世紀初頭、日本は世界に先駆け、遺伝子治療と再生医療の分野で飛躍的進歩を遂げた。  その結果、日本は世界に類を見ない、疾病のない成熟した高齢化社会を確立した。  だが日本政府は、高齢化社会の秩序の安定をはかることを大義名分とし、大きな課題であった、凶悪化した青少年犯罪を撲滅させるための最終決定を迫られていた。  やがて恐ろしい計画は、静かに進行していった。  時の総理大臣は、声高に国民に訴えた。 「子どもたちは成長していきます。 いつまでも貴方に微笑みかけてくれる可愛いい少年少女のままではないのです。 でも、もしその子達がいつまでも可愛いいままでいてくれたらどうですか?」  こうして、ヒトの成長を遺伝子レベルでコントロールするという、ロストチルドレン法案が議決された。  多くの国民が望んだ通りに。  やがてロストチルドレン法が施行され、十歳未満の小児は、遺伝子レベルで全ての成長を完全に止められてしまった。
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