わたしの逃走劇

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早く、早く…… アイツから、逃げなくては! 私、各務つゆり(かがみ つゆり)は、まだ人もまばらな廊下を全力で走っていた。 時刻はついさっきお昼のチャイムが鳴ったという頃。 そのまま減速し、横手の引き戸を開け、中に入る。 そこは空き部屋なのか、授業で使うのであろう様々な物が雑多に置かれてあった。 やっぱり違うところにしようかしら……という考えが浮かぶが、今さら他を探すのも面倒臭いし、この部屋はなかなかお昼ご飯を食べるにはうってつけの場所だった。 窓際で食べようと数歩あるくと、足元の「何か」につまずき、私はろくに受け身も取れないまま転んでしまった。 ……? 痛く、ない? 転んだにも関わらず、私が予想していた痛みや衝撃はやって来ず、変わりに身体の下に温もりと……身体の下で何かが動いている? 私は3秒で全てを把握し、瞑っていた目を開いて後退りをしようと……した。 しかしそれは何者か……私の身体の下にいた人物によって遮られる。 「やあ、つゆり。今日は随分と積極的だけど、どうかしたのかな?」 私の天敵、篠原璃丘(しのはら りく)によって……
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