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「お前が後宮の代表とやらか」
世界中の行商人が集まる西の大国、ローディナス。その壮麗たる宮殿の中でも一際威厳を感じさせる謁見の間には緊迫した空気が流れていた。
並ぶ臣下達の視線を集めるのは、麗しい二人の男女。
「セシリア・リレイン」
何もないのに思わず謝ってしまいたくなる低い問いを発したのは、数段高い位置にある玉座に腰かけるソロン。
つい最近王の名を背負う事になった、褐色の肌を持つ銀髪蒼眼の青年だ。
「はい、陛下」
対するのは黒髪黒眼の娘、セシリア。臆する事なく答えた声は静かで耳に心地好い響きを持っている。
「そうか。ならば――」
礼をとる娘を見下ろし、ソロンは一瞬だけ口端を歪めた。
「失せろ」
ただでさえよく通る声は、衣擦れの音さえも聞こえないその場では反響したかのようにまで錯覚する。
跪き、深く頭を垂れたセシリアの肩が僅かに揺れた。
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