それは嵐の前の静けさ

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「光太郎、起きなさいよ光太郎」 「ん、あ……」 ゆさゆさと、身体を揺すられながら至って平凡な容姿の少年ーー皇光太郎(すめらぎこうたろう)は目を覚ました。 「沙姫……か」 「沙姫……か。じゃないわよ、もう放課後よ」 眉を釣り上げて、茶色い短い髪、幼さの残る顔付きは上村沙姫(かみむらさき)である。 場所は学校の教室て、光太郎は机の上に頭を乗せて寝ていた。 服装も学生らしく光太郎は学ラン、沙姫はセーラー服である。 「あ~。全く、良い気分で寝てたって~のによ」 「何を自分は被害者面をして言ってるのよ? 午後の授業の大半は寝て過ごしていたでしょ?」 「ごもっともで……」 返す言葉もなく、光太郎は席から立ち上がると鞄に教科書を無造作に突っ込む。 教室に誰の姿もない。 「待っててくれたのか?」 「えっ!? いや、そういう訳じゃ……」 顔を赤くして、沙姫はしどろもどろになる。
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