開戦

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「さて……これだけの力を見せても臆さないのは評価するわ」 でもねーーと、続けられた後に美香は未だ点滅する紅の大剣を肩に担ぎ直す。 「私には遠く及ばない」 音もなく、美香は志津久の横に立つ。 そして、大剣を振り回す。 ただ大剣が志津久を切りつける事はなかった。 大剣によって生じた風圧で志津久の身体が僅かに浮いた。 その間にできた隙にーー美香は拳を叩き込んだ。 威力を増す為に捻らせながら。 見事に目論見は成功した。 志津久は肺に貯まった酸素を吐き出しながら、床に崩れ落ちる。 リーヴスと志津久ーー2人の強敵をものともせずに捩じ伏せた。 「ふぅ……終わったわね」 戦闘が終わり、美香は安堵をする。 手合わせして分かった事だが、志津久もリーヴスも強すぎた。 美香も余裕を咬ましていたが、表面上には表さなかっただけで余裕はなかった。 「では、先に進むか」 「残念だけど、それは無理よ」 シンがアグニエシカと島津の救援へ向かおうとするが、美香はそれは無駄だと告げた。 理由はシンも気付いた。 なくなっているのだ。 次へ続く為の扉が。 「アンシャールじゃないわね。キシャールの仕業みたいね」 「何故、そう言い切れる?」 「キシャールは地神よ? コンクリートだって岩の塊みたいなものだから、それを操れば扉を埋めるなんて雑作もないわよ」 「ならば壁を壊せばーー」 「壊せると思う?」 シンはしかし頷く事はできなかった。 キシャールがそこまで単純な事をするとは考えづらいのだから。 「あとは彼女達と光太郎に任せましょう」 ここに来ていない光太郎の名前が上がるのは不思議だったが、シンは気にしている余裕はなかった。
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