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「ここは私が引き受けます。私にはできませんが、光太郎様のご友人のあなた方なら止められるのでしょう?」
「任せておいて」
島津に詳細を聞き出したかったが、とにかく時間がない。
アグニエシカは島津の手を引いて駆けた。
しかし、燦というディフェンスがいる中では突破も難しい。
だが「光太郎」の名前を出した朔をアグニエシカは無意識の内に信頼していた。
朔はナイフを2本、逆手に持って燦に切りかかる。
横に狭い廊下で距離を詰める必要はない。
一歩進むだけでも間合いは詰まる。
しかしながら、燦は大剣を取り出して朔が振るうナイフの軌道に合わせて振るった。
ガキンッ!! ガキンッ!!
金属音が2回響いた。
朔の振るったナイフが2つとも天井に向かって弾かれた。
彼女の手には何もない。
それを隙と見たか、容赦ない上段からの一刀を燦は描いた。
対し、朔は両手を上に突き出しーーその手に太い棒が現れた。
太い棒は大剣を受け止めるに至る強度を誇っていた。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
朔の役目はそれで十分だ。
アグニエシカ達を先に進ませる事こそが任務なのだから。
「後はお願い致します」
朔は彼女達を信用するしか道は残されていなかった。
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