夢祭り

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田んぼの向こうの祭囃子(まつりばやし) そろそろあっちへ向かおうか 爺(じじ)に手引かれて一本道 下駄に寝巻きに髪飾り 天高々と塗られた青は いつしか赤と紫に 遥か遠くで手招く爺は いつしか天狗で猿轡(さるぐつわ) 田んぼの向こうの河川敷 老いも若きも皆踊れ 大工に猫に古い友 ドンチャン拍子で皆踊れ 見知らぬ男に口付ける 愛しい貴方は河の中 天女の衣がよく似合う 強い貴方は河の中 流れの狭間に身を乗せて 淫らな私をただただ睨む 無知な瞳にああ眩暈(めまい) 玉屋鍵屋と人の声 こんなはずじゃあなかったの 花火は上がらぬ河川敷 こんなはずじゃあなかったの 寝巻きの裾は綻びて 祭りの煙も夢うつつ ひらりひらりと帯が舞う 踵を返す金魚姫 残る私はトチ狂い 下駄に寝巻きに髪飾り 煙(けむ)に巻かれた河川敷 そろそろあっちへ帰ろうか 倒れたぼんぼり散る火の粉 極彩色にきらきらと ブレる私を掻き抱いて 縦に斜めに宙ぶらりん 田んぼの向こうの祭囃子 そろそろあっちへ向かおうか 気づけば遠のくその拍子 寝覚める私の枕元
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