15話

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薫 side +--+--+--+-- 「あ、お疲れ様。凄い試合だったね」 「春日井、真弘…」 雪羽が校舎へと入っていくまで眺めていた俺が、昼食をとるために一旦寮へ帰ろうとしていたところだった。 道沿いに立ち並ぶ木の下にある、木陰のベンチに座りながら固形の栄養食料を食べている春日井に会ったのは。 「サッカー上手いんだな。僕、深山君は絶対バスケに来ると思ってたんだけど」 「・・・雪羽に丸め込まれたんだよ」 「…え、雪羽に?」 春日井は一瞬きょとんとした顔を見せて、それから破顔した。 驚く、こんな春日井の顔は知らない。 「ふふっ、雪羽も強かになってるなぁ。 深山君が折れたんだろうけど、…っはは、本当に面白い」 「・・・、」 「?…あぁ。そりゃあ僕だって笑うよ、失礼だな。 というかそこ、暑いだろ?せめて木陰[コッチ]入ったら?」 「…あぁ…、」 ベンチのド真ん中に座ったまんま動かねェとこ見ると、座らす気はないらしい。 俺は少しだけ距離をとって、木陰へと入った。 「───そんな警戒しなくっていいのに」 「あの時のことを、俺は許したワケじゃねェからな…」 「ま、それも正しい意見だね」 春日井は、あっさりと俺の言葉に頷くと、栄養食を口へと放り込んだ。 数秒もしない内にそれを嚥下し、俺に視線を戻す。 かなり値踏みされているような“それ”に、俺は心の中でイタダキマスと言いながらゆっくりと頷いた。 「…君が許さなければ、君が僕から雪羽を守れる」 「!」 「もっと性根入れて守ってやれよ。 あぁ、でも雪羽が嫌がるのか」 「守られるのは性に合わねェらしいからな」 「馬鹿だよね、雪羽のカードには"自分"しかないのに」 春日井が呆れたようにそう言う。 そこで俺はふと気付いた。 カードというのは、言わば持ちうる手段だ。ならば雪羽は、誰にも負けないほどのカードを1つ持っている。 「如月財閥は雪羽の最大限のカードだろ?」 「は、何言ってんの?…まさか、如月のこと、知らないのか?」 眼鏡越しで、これでもかというほど春日井が目を見開く。 だから俺は、自分が如月のことについてはあまり深く調べていないと伝えた。 俺が付き合っているのは雪羽個人で、ビジネス上の付き合いである如月財閥とは今のところ全く摩擦はないから、知る必要がないのだと。 春日井は何も言わずそれを聞いていたが、聞き終えると、肩をすくめて苦笑した。 .
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