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「死にたい」
それが彼女の口癖だった。
俯きがちに指の爪を弄る実月は墨のような黒髪を茶色のゴムで縛っていて、こちらに視線を向ける。
「殺して」
僕は席を立って彼女の所に移動して三日月の白い首に手を掛けた。
「君の最期の見た人物が僕って事だけが汚点だね。でも大丈夫。僕は君を綺麗に死なせてあげるから」
「・・・それってどういう・・」
三日月が言い終える前に僕は両手に力を入れた。
三日月の首は今にも破裂しそうに脈打っていて少しだけ気が引ける。
三日月は無表情だった。
ばちりと僕と目があった。
ぷいっと逸らすと乾ききった唇がかすかに動きでこう言った。
「首を絞められるのはシンプルじゃないの。それに・・・そう。貴方に首を絞められるぐらいだったら自分で死ぬわ」
そう言うと彼女は僕の手を振り払って薄汚れた鞄を持つと歩き出した。
「貴方には失望した」
一瞬振り返ってそう一言呟いた。三日月の足音は静かな廊下にパタパタと鳴り響いた。
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