楓と闇のボス

38/41
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
「首ではないぞ。事情があってな。法華院家が破産したように見せかけたんだ。その時、日立財閥の跡取りである冬哉君と楓が一緒にいては説得力が無いと言う事で・・・泣く泣く引き離したのだ」 「日立財閥? ・・・冬哉が・・・跡取り?」 「そうだよ。法華院家よりもっともっとお金持ちなんだよ。冬哉君はね」 「何をおっしゃいます。法華院家の足元にも及ばない家柄です。だから冬哉と楓ちゃんの結婚を機に法華院家と一緒になると・・・」 「まあ、早い話が合併だな。わかったか楓?」  執事・・・冬哉は執事。違ったの? 8歳の私は・・・一緒にいる冬哉を・・・『執事』だと・・・『思い込んでいた』・・・・だけだった・・・と? 「そんな・・・。それじゃあ・・・どうして破産した振りしたのっ?」 「それはな、当時慈善事業に力を入れていたわけだが、どこかの組織の反感を買ったんだ。攻撃は脅迫・事故。そして、家族に危害が及ぶ前に破産して力を無くした振りをしたわけだ。当時法華院家はそっち方面、つまり暴力組織への対策はまったくしていなかったからな」 「それじゃあ・・・お父様はこの8年の間に対抗する武力組織を作っていた・・・の?」 「ん? ・・・いや・・・考古学に明け暮れてた!」  胸を張る父に、私は全身の力が抜けた。 「それが法華院家の良い所なんですよ」  冬哉のおじ様は、私のお父様のその様子を見てクスリと小さく笑って続ける。 「その組織への調査は日立財閥が請負ったんだ。政界にまで及ぶ力を持つ組織でなかなか正体を現さなかったが、しかし最近、ついにしっぽを掴みかけたところで、それに気がついた組織はまた法華院家の家族を狙おうとした。つまり、楓ちゃんや光君、雫ちゃんに危害を加える事で圧力をかけようとした訳だ。もちろん当主になるのが確定している楓ちゃんが一番の標的になってしまったんだけどね。それが今回の事態なんだよ」 「あー・・・。狙われた理由がわけわからなかったけど・・・それは、それで納得・・・」 「おまかせくださいっ! 自分が背後を吐かせて見せますよ! 自信あります!」  大山さんが黒スーツを直しながら、冬哉のおじ様に言った。そう言えば、厳密にはこの人達は冬哉では無く、そのお父様に雇われている訳だ。冬哉はまだ跡を完全に継いでないから・・・。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!