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俺達は二人そろって教室の外へ向かう。
彼女の名はシズカ。もう付き合って・・どのくらいになるのだろう。二年生の一学期の初め頃から俺と特別な関係の女の子だ。
「仲の良い事で! 今日も二人でデート?」
そんな俺達に冷やかすような顔で話しかけてくる茶髪の子。
シズカとは対照的で、髪の色とパーマ、そしてその口調や表情から活発な印象を与えるハルミだ。
こいつとは一年生の時からクラスが同じ、俗に言う腐れ縁である。
「なんだ? 仲間に入れて欲しいのか?」
「ばーか。そんな野暮ったいKY女子じゃないよ、私は!」
ハルミは顔の横で人差し指を振りながら、俺に向かって口を尖らしている。
「別に構わないのに。・・・なっ、シズカ」
俺が顔を見ると、シズカはすぐに目を伏せる。
どうしてか彼女はいつもこんな冗談を俺が言うと、ハルミに対して申し訳無さそうな表情をするのだ。
「え・・・マジで? いいの? ・・・なーんて! 言うと思ったか! 私だって誘ってくれる男の一人や二人・・・」
そう言いながらハルミは周りを見回す。しかし、近くにいた男子は全員目をすぐに逸らした。
「何よぉ! こんな美女が誘いを待っているって言うのに!」
ハルミは頬を膨らまして怒った様子だ。
そんなこいつに教室の隅に集まっていたグループからカラオケの誘いがかかる。すぐに、「ほーらね!」と言いながら俺に対して舌を見せた。
ハルミは正直言って、かなり可愛い。
さっき周りの男が目を逸らしたのは、おそらくそんなハルミを単騎で誘える豪傑では無いからだ。
実を言うと、俺も一年生の頃は少し惹かれている時期があった。
しかし、誰にでも気さくに話しかけ、明るいハルミをとても自分のものにする自信が無い。
「ばーか。ただの友達でしょ? それ以上無理!」 ・・・どうせそうなるに違いなかっただろう。
だけど、最近良く夢を見る。俺はハルミに告白してOKをもらうのだ。
そして付き合い、楽しい一年を過ごす。はっきりとは覚えてないが、かなりリアルな感覚や気持ちを伴う夢だと思う。
しかし、なぜか高校二年生の一年間でそれは終わり、三年生になった時の夢は見ないのだ。
三年生になりクラスが変わって俺は振られてしまうのか? それとも俺が現実に三年生になったら続きを見るのか?
・・・それは春休みが終わってまた学校が始まれば分かるかもしれない。
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