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・・・残念ながら集中力の無さでなかなか力を発揮出来ないでいるが。
しかし、口下手で人見知りも激しく、なかなか友達が出来なくもある。
それに加え、常識を逸するほどの天然ぶりも相まって、・・・あまり親しい女子がいない。
身長は155cmで女子としては少し小さく痩せ型・・・と、まあ、スタイルも悪くは無く、顔もかわいいと思うのだが・・・、いつも少しおどおどした様子から、男子からもあまり受けが良くない。
俺達は高等部から大学部に入り、その駐車場に内緒で止めてある大型スクーターにまたがる。
「柚子、だからスカートはお尻の下に挟むんだよ。じゃなきゃパンツ丸見えになるだろ?」
一生懸命座りなおす少女の頭にヘルメットをかぶせた。
「帰るぞ。しっかり捕まれよ。しっかりとだ!」
俺はバイクのエンジンをかけた。少女は力いっぱい俺にしがみつき、俺はその体のぬくもりを感じながらアクセルを回した。
「アイス! アイスぅ!」
「チョコクッキーだろ?」
「うん!」
「ほら! 手が緩んでいる!」
バイクは門を抜け、道路を街に向け走った。
そんな柚子と俺は10年ほどの付き合いになるだろうか。初めて会った時は覚えていない、それくらいの歳だった。
俺達が今通っている高校は、私立『大谷大学付属高校』。一般的には歴史のある名門校と言われている。
しかし、高校一年にして大学入試センター試験過去問で東大の足切りをクリアしてしまう俺には少し物足りない学校だ。
柚子にもう少し集中力が備わっていれば、勉強に関して退屈のしない学校に俺達は通ったのだろうが・・・。
まあ、勉強なんてどこでも、どんな学校でも出来る。俺にとって重要なのは、柚子と同じ学校に行くと言うことだ。
・・・どうしてかって?
[カンカンカン]
ベタな足音を響かせながら俺は柚子が住むアパートの金属の階段を上る。
二階の、一応角部屋と言える部屋の扉を開けて俺と柚子は中に入った。
「アイス美味しかったぁ。また来週が楽しみー」
「時間が無いから、邪魔だから座ってろ」
意味もなく俺の周りをウロウロとする柚子を座らせて、俺は台所に立つ。
「もう6時だよー。柚子が自分でご飯作るから直くんはジムに行ってきてー」
「ドリアはお湯を入れるだけでは作れないんだぞ」
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