失われた筈の記憶。

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そして、袋に入れて担いでいた木刀を抜き、瞬時に勢いよく踏み込んで思いきり振るうが、 「…!!」 「……ほら遠慮するな、本気で来いよ」 虎次郎が力一杯本気で振るった木刀は、確実に男の胴を確実に捕らえるが、それに対し男はピクリとも動かない。 それにより驚きを隠せない虎次郎はすぐに一歩退き、柄を伝って感じる反動により痺れる掌に目を向け、そしてまた強く握り締め直す。 「どうした、ほら」 「野郎…っ!」 虎次郎は、また再度勢いよく踏み込み直し、更に強く力を込めて木刀を振るうが、それさえ受けても男はやはりピクリとも動かない。 それでも虎次郎は、得意の速技で何度も撃ち続けるが、 「もういい…飽きた」 「…っ!!」 男がバッと胸を張ってその木刀に触れた瞬間、虎次郎はバランスを崩して足元が揺らぎ、その隙に男はすかさず虎次郎の腕を掴み、 「さて…攻守交代だ!」 「…ッァ!!!」 渾身のラリアットを叩き込んだ。 その直撃を鎖骨辺りに受けた虎次郎は、余りあるパワーで全身が上下180度に傾いて跳ね上がり、頭から地に叩き付けられる。 そんな虎次郎に対し、男は見るからに興醒めと言わんばかりの態度を覗かせ、一方で虎次郎は、怒りと激痛により四肢を震わせながら尚も立ち上がろうとしていた。 そんな虎次郎を男は嘲笑いながら、 「なんだ、まだ力の差もわからず挑む気なのか?」 「…っっ!!」 軽く脇腹に重い蹴りを入れた。
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